こどもたち!
虐待を受けた子供達と園長すけの物語。
園長すけは子供達の問題行動を叱る事はしません。
問題行動の原因を探る為彼らの残酷な過去や哀しい出来事を知ろうとします。
園長すけは子供たちが将来への希望を持てるように
慈しみ包み込んで子供たちの心の傷を癒していきます。
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こどもたちのあらすじ
園長すけの経営する「光学園」は虐待を受けた子供達を預かる施設。
子供達はここから学校に通っています。
ところが「光学園」の生徒の中には度々問題を起こす子もいて
教師からは良い印象を持たれていませんでした。
今日も給食だけ食べて逃げ出す子を
追いかける教師のどなり声が聞こえてきます。
盗癖がありクラスメイトまで万引きに巻きこんでも
全く罪の意識の無い子すぐにキレて暴力を振るう子
感情表現ができなくて誤解されいじめを
受け続ける子もいます。
子供に暴力を振るっていた母親は実は自分も知らずに
自分の母親から暴力を振るわれていた事に
気づいていなかったり性的虐待を受けた子は
身体だけでなく心に強いダメージを受けています。
子どもたち!
その為自分を汚れた人間恥ずべき人間と思いこんで
自分への評価がとても低く必要以上に自分を卑下したり
なげやりになって自分を大切にできなかったりします。
また実の親から性的虐待を受けていても周囲からなかなか信じてもらえず
ずっとうそつき呼ばわりされる子も。
名家と呼ばれる家では世間体を気にする姑に過干渉された揚句
ストレスから実の子に理不尽な仕打ちをしてしまう母親。
ずっと目立たない性格だったのにたまたま脚光を浴びたことから
その快感を忘れられず「代理ミュンヒハウゼン症候群」のように
子供にわざと危害を加えては病院に駆け込む事を繰り返す母親。
園長すけはどんな問題行動を起こす子にも理不尽に子供を痛めつける親にも
そうなるには理由があるはずという信念を曲げる事無く
常に優しく冷静に対応して問題を1つ1つ解決していきます。
いろいろな障害に立ち向かっていく園長すけを子供たちも
職員も頼りにしているのですが実は彼自身も心の中に
消えない傷を負っていたのでした。
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こどもたちのネタバレ
のばらは中学2年生。
問題児です。
光学園にやってきた時の説明によると小学3年生から
援助交際をやっていたそうです。
のばら本人も悪びれることなく今までの事を話し
「小学生って儲かる。中学卒業したら辞める。」と
うそぶきます。
そんなのばらは光学園でも浮いた存在になっていました。
のばらには自分と同じように性的虐待を受けた子供が誰か
すぐに判りました。
同じ虐待を受けた子供同志判る同じ匂い。
でもそれは望ましくない形で披露されてしまう事も多々あります。
のばらはそんな子に近づくとその子が
一番言って欲しくない言葉を耳元で囁きます。
するとその子達は当時の光景がフラッシュバックして
血の気が引きガタガタと震え時には
失神発作まで起こしてしまうのでした。
さらにのばらは同級生の彼を誘惑したり無断で夜施設を抜け出して
多額のお金を持ちかえったりも。
散々周囲を振りまわした挙句のばらは
こっそり施設を出て行ってしまうのでした。
行く先は担任の教師の家。
そもそものばらが施設に保護されたのは
この担任の男性教師からの通報があったからでした。
のばらはこの男性教師に好意を抱いており彼に今まで自分が実父や義父から
性的虐待を受けている事を打ち明けました。
彼は教え子からの衝撃的な告白に激しく動揺し
助けて欲しいと甘えるように抱きついて
訴えて来る彼女にうろたえました。
子どもたち!
抱きたくなる衝動を辛うじて押さえて相談所へ通報したものの
再び同じ状況になったらどうなるか判らないと彼は言っていました。
のばらの一見挑発に見える行動は「私を受け入れて欲しい」という
願望の表れで性行為を望んでいるわけではありません。
彼女には性行為の意味さえ判ってはいなかったのです。
結局彼はのばらと一線を越える事は無く自分を受け入れて貰えなかったと
感じたのばらは傷心のまま街をさまよい数人の男性から
暴行を受けそうになって保護されます。
光学園に戻ったのばらは食事も取らずにふさぎ込み部屋にこもってしまいます。
一方母親は娘が夫と関係を持った事は知っていたと告白します。
ただしそれは性的虐待ではなく夫と娘が自分をないがしろにする行為と
捉えていて娘に嫉妬していたというのです。
のばらが保護されてから夫は母親にのばらを連れ戻せと強要して
暴力をふるい続け母親は命辛々逃げ出して光学園へ辿りつきます。
のばらはボロボロになった母親を見て父親への怒りをあらわにします。
そこで母親は初めて娘の痛みを知るのでした。
母親はそのまま光学園の母子寮に入居し
夫から隠れてのばらと生活を始めます。
するとのばらに変化が起こり始めます。
なんとのばらが赤ちゃんに還ってしまうのです。
実父や養父から虐待を受け続けた忌まわしい幼少時代。
甘えたくても甘えられなかったこの時代を
やり直したいと願った結果なのでしょうか。
それはとても演技とは思えないものでのばらに嫌味を言われ続けた職員も
のばらの変わりように言葉を失います。
また幼児のように遠慮の無い甘えように堪りかねて
のばらを振り払おうとする職員を母親は
突き飛ばしてのばらを庇います。
「うちの子に何をするんですか。この子はまだほんの小さな子供なんです」。
そしてのばらを抱きしめながら涙を流してのばらに謝るのでした
「今までごめんね。守ってあげられなくてごめんね」。
それからのばらは母親に慈しみ育てられ1日1歳ずつ順調に成長していきます。
そして自分を大事にする事も自然に学んでいきます。
顔つきもすっかり穏やかになり小さな子供を抱き上げる
のばらの顔には優しい笑顔が輝いていました。
「人は大切にされる事によって自分の事も
他人の事も大切にする事ができるんだな」
園長すけはつぶやきます。
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こどもたちの感想
私にとって曽根富美子さんは元々大好きな作家さん。
男女や親子の愛憎劇などでは感情をむき出しにした人間の表情が生々しく
人間の残酷さや心の奥に秘めた複雑な感情までも実にうまく表現され
物語の構成力の巧みさ肉筆ならではの迫力ある画力も
あいまってまるで良質の映画を観ているようです。
曽根富美子さんが幼児虐待を扱った
作品を書かれている事を知り早速購入。
期待は高まるばかりで包装を破るのももどかしくページをめくりました。
子どもたち!
そこには期待以上の感動が待っていました。
時に残酷で目を覆いたくなるような描写も多くありますが
様々な問題を抱えた子供達や親達の問題が次々にあらわになり
解決していくので見ていてまだ救われる気がします。
実在の学園と園長をモデルにしたという本作品は
それだけでも重みがありますが人間はいつでも変われる
成長できるという事そして未来への希望を諦めなくて良いという
理念に胸が熱くなります。
内容が濃いのに文章的・説明的な描写に終わらず光学園の子供達や
周囲の大人達を通じて人間は良くも悪くもお互いに
関わりあって生きているという事を
しみじみと感じさせてくれます。
絶対お勧めの作品です。
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